
<介護保険将来の財源は>
◆負担者拡大 高いハードル
介護保険の財政が逼迫(ひっぱく)している。厚生労働省は、現在、40歳以上の保険料負担者の範囲を39歳以下に広げ、財源を確保したい考えだが、関係者の意見がまとまる気配はない。今後も高齢者が増え続ける中、介護の費用をどう賄うのか――。前向きな議論が求められている。(社会保障部 小山孝、安田武晴)
◆利用者本位の議論も必要
「拙速なる統合には、はっきり言って反対致します」。2月5日、厚生労働省で開かれた「介護保険制度の被保険者・受給者範囲に関する有識者会議」。大浜真・全国脊髄(せきずい)損傷者連合会副理事長は語気を強めた。
有識者会議は、若い人にも介護保険料を払ってもらう代わりにサービスも受けられるよう、制度改正を検討している。昨年3月、省内に設置され、この日は主要障害者団体から意見聴取を行った。
介護保険のサービス受給者は、2006年度で約350万人、給付費は6・3兆円。65歳以上が払う保険料は月4090円(全国平均、基準額)。制度開始当初に比べると約1200円アップした。
国も、介護予防の導入、施設の居住費・食費の自己負担化、療養病床の削減などで費用抑制に努めているが、給付費は15年度、10兆円に達し、保険料もさらに上昇する見通しだ。
そこで検討されているのが、保険料負担者の範囲を拡大し、より多くの国民から広く財源を確保することだ。厚労省の推計では、保険料負担者を30歳以上、保険料は年齢にかかわらず同水準とした場合、給付を0歳まで広げたとしても、12年度の保険料は、4900円から4500円に下げられる見通しだ。
◆企業は反対
だが、拡大へのハードルは高い。負担増となる企業は、「若者が要介護になるリスクは低く、保険になじまない。現役世代の負担はすでに重い」(日本経団連)と反対している。
介護保険サービスを使えるようになる障害者団体の間でも、保険を利用した際に発生する自己負担の重さや、現行の福祉制度(障害者自立支援法)からの移行後への不安感が強い。政界も、「国民に負担増を求める話のため、選挙前は議論さえ難しい」(自民党幹部)という状況だ。
有識者会議は夏までに報告書をまとめる予定だが、省内にはすでに、「09年度からの拡大は無理」とのあきらめムードが漂う。
これに対し、「人口の約4割が高齢者になる日本の将来を考えたとき、本当に40歳以上だけで制度を支えていけるのだろうか」という声も聞かれる。介護保険は、サービス利用者が増えると保険料が自動的に上がっていく仕組みだけに、要介護高齢者が増えれば、保険料の上昇は避けられない。
「将来を考えれば、対象拡大は欠かせない。安定財源の確保は若年障害者の福祉向上にも役立つはずだ。障害と一緒になることで、介護保険に『利用者本位』の視点も強化できる。そんな制度設計が今後は求められる」と日本福祉大の平野隆之教授は強調する。
◆介護予防の効果
拡大が難しい場合、制度を持続可能なものにするために、ほかにどんな方法があるのだろうか。
費用抑制の一環として厚労省が推進しているのが、介護予防だ。予防の導入で14年度までに給付費を約2兆円、要介護者数も40万人抑制できると見込んでいるが、財政効果については未知数だ。
日本社会事業大学専門職大学院の藤井賢一郎准教授は、「予防にかけた費用以上の財政抑制効果がない場合、保険の給付範囲は限定的であるべき。むしろ、給付は中重度者に特化し、軽度の人への生活支援などは自治体が税財源やボランティアの協力を得ることで行っていくべきではないか」と主張する。
給付抑制策としては、自己負担割合(1割)の引き上げも選択肢になる。自民党内でも2割負担の是非が昨年、検討された。日本経団連の高橋秀夫・経済第三本部長は、「軽度者の生活支援を3割にするなど、サービスの種類によって自己負担を変えることは可能ではないか」と提案する。
現金給付が給付の抑制につながるという考え方もある。現金給付の給付水準が現物給付(介護サービス)より低く設定されるためで、ドイツでは、現金給付の導入が財政安定化に貢献しているといわれている。
◆給付削減に反対44%
保険財政安定のための様々な選択肢が想定されるなか、財政論議を深めると同時に、「どのような介護を提供するか」という視点も欠かせない。
全国の有識者約2900人を対象に医療経済研究機構が昨年から今年にかけて行った調査では、「保険料がこれ以上高くならないよう、給付を削減すべきだ」という意見に対し、反対(44%)が賛成(16%)を上回った。むやみな給付カットは制度への信頼性を揺るがす。負担増が避けられないなかで、社会の合意を得るには、介護の質や給付の範囲を含め、安心できる制度の全体像を示していくことが求められる。
◆独やオランダなど 全世代に介護提供
日本が参考にしたドイツの介護保険制度は、若い障害者を含む全世代の介護ニーズに対応している。1995年にスタート。財源の半分を税で賄う日本と違い、保険料だけで運営され、働いていれば10歳代からでも負担する。高齢化による給付増で単年度赤字が続いているが、原則1・7%(労使折半)という保険料率が制度発足当初から変わらずに済んでいるのは、幅広い世代から保険料を集めているためだ。
また、給付対象を中重度者に限定し、現金給付を実施していることも、財政安定に寄与しているとみられる。
年齢にかかわらず介護サービスを提供している国としては、介護保険制度を持つオランダのほか、税で介護サービスを提供しているイギリス、スウェーデンがある。
「介護の主たる対象は高齢者だが、どの世代にも介護ニーズはあり、それは等しく保障されるべきだという社会的合意が海外ではできている。その合意が制度を支えている。『お金がないから若い人からも取る』という発想では、国民の理解は得られない」と山口県立大の田中耕太郎教授は話している。
◆[プラスα]広がる民間の介護保険
生命保険、損害保険会社などが発売する民間介護保険への関心が高まっている。介護が必要になると現金が給付され、公的介護保険の自己負担分の補てんのほか、ヘルパーの追加など、自費による介護サービスを賄うことができる。公的介護保険で対象外の40歳未満の人にも給付される商品も多い。生命保険文化センターによると、国内の生保が扱う介護保険の場合、2003年度に146万件だった契約件数は、05年度に203万件まで伸びている。
給付内容は〈1〉一時金〈2〉年金〈3〉一時金と年金の併用――の3タイプがある。介護保障を主契約とした商品もあるが、終身保険など主契約に特約として付加する商品や、終身保険の保険料払い込み満了時に介護保障に移行できる商品もある。対象年齢は、おおむね15〜80歳。給付要件となる要介護状態は独自の基準に基づく場合と、公的制度の要介護認定に連動する場合がある。同センターは「特約で付加したのに忘れて請求していない例もあるので、契約書をよく見て」とアドバイスしている。
(読売新聞より)
<「かかりつけ医像」を再度検討>
国民健康保険中央会は本年度「望ましいかかりつけ医像」に関する検証作業を行う。国保中央会は昨年末、後期高齢者医療制度で人数に応じた定額払い(人頭払い)と出来高を組み合わせることを提案したが、導入できなかった経緯がある。2010年の診療報酬改定になんらかの形で反映させたい方針だ。
<転換先の老健、特養に経過措置>
厚生労働省は、療養病床再編による介護施設等への転換が思ったほど進んでいないため、3月29日に開かれた「社会保障審議会介護給付費分科会」に促進策を諮問し、療養病床の転換先である老健、特養の施設基準の経過措置を決めた。
老健施設に転換する際の施設基準の経過措置(廊下幅、床面積)は平成18年7月に実施されているところ。この5月から食堂・機能訓練室の面積、廊下幅の基準を緩和する。加えて、介護老人福祉施設において「重度化対応加算」の看護職員配置の経過措置が本年3月31日までとなっていたため、この点についても平成20年度末まで延長することを決めた。
新たな転換支援策となったのは病院の療養病床の面積基準、廊下幅の経過措置を診療所、一般病院まで広げたことに加え、食堂、機能訓練室は転換元である病院、診療所のまま移行できるというもの。老健に転換する病院の経過措置は、「食堂の面積基準は1人当たり1?以上」で、「機能訓練室は40?以上」となっている。診療所から老健に転換する場合は「食堂+機能訓練室が1人当たり3?以上」となっている。療養室の床面積1人当たり6.4?以上は平成23年度末まで、食堂・機能訓練室・廊下幅は平成24年度以降も適用される。サテライト型小規模老人保健施設では食堂は同じ基準で、機能訓練室は本体施設と共用できる。特別養護老人ホームへの転換も同じ緩和措置がある。
◆重度化対応加算の経過措置延長
平成18年度の介護報酬改定で介護老人福祉施設などの入所者の重度化に対して夜間を含めた看護体制の強化、看取り体制を整備するという視点で「重度化対応加算」や「看取り看護加算」が設けられた。厚生労働省は改定の際、ほとんどの介護老人福祉施設で看護体制が強化され、看取り体制が整備されると考えていたが、経過措置の准看護師配置で可とする体制においても3分の1以上の介護老人福祉施設で算定されていないことがわかった。
このまま3月31日で経過措置が終了すると看護職員の獲得がままならないことと相俟って「重度化対応加算」が算定できる介護老人福祉施設が減少すると予想されたため、経過措置を延長することにしたもの。
同日の答申では、各介護老人福祉施設が看護師の確保に関する計画を立て、厚生労働省と都道府県は支援措置を講ずることと明記された。
「重度化対応加算」の要件は?常勤の看護師(平成19年3月までは常勤の看護職員)を1名以上配置し、看護に係る責任者を定めていること。?看護職員により、又は病院若しくは診療所若しくは訪問看護ステーションとの連携により、入所者に対して、24時間連絡体制を確保し、かつ、必要に応じて健康上の管理等を行う体制を確保していること。?看取りに関する指針を決め、入所の際に、入所者又はその家族等に対して、当該指針の内容を説明し、同意を得ていること。?看取りに関する職員研修を行っていること。?看取りのための個室を確保していること。
*「夜間看護体制加算」については、?・?の要件に加え、「重度化した場合における対応に係る指針を定め、入所の際に、入所者又はその家族等に対して、当該指針の内容を説明し、同意を得ていること。」でよい。また、「重度化対応加算」は「看取り介護加算」の算定条件となっている。
「看取り介護加算」は死亡前30日を限度として、死亡月に加算する。
看取り介護加算1 (施設・居宅で死亡) 160単位/日
看取り介護加算2 (上記以外で死亡) 80単位/日
<都道府県ごと運用バラバラ 特定事業所集中減算 囲い込み抑制に効果も疑問>
昨年4月の介護報酬改定で居宅介護支援事業所の「囲い込み」を防止するため新たに導入された「特定事業所集中減算」だが、本紙が全国の都道府県に聞き取り調査を行ったところ運用にバラつきがあり、減算の対象事業所となった事業所数も「ゼロ」から「約2割」まで差が出ていることがわかった。「囲い込み」とみなさないための除外要件をみると、「公正・中立」を制度や基準で規定する難しさが浮かび上がる。
居宅介護支援事業所が公正・中立を守らずに法人の「営業マン」になっているという批判から導入されたのが特定事業所集中減算だ。営利法人の参入が多い福祉用具レンタル、訪問介護、通所介護の3サービスについていずれかで同じ法人のサービスだけを九割以上、位置付けた場合は、罰として全利用者のプランの作成料が1月一人あたり2000円減算される。1年間を前期、後期に分けた6カ月の実績で判定し、減算期間も6カ月だ。
しかし、「利用者の集中」は事業所がサービスの質向上に努力している証ともいえるし、地域に選択できるだけの事業所がない場合もある。利益誘導の「囲い込み」と「正当な選択」または「やむを得ない選択」の結果の集中との線引きは難しく、当初、強気だった厚生労働省も最終的には「9割以上」と要件を緩やかにする一方で、地域に他にサービス事業所がないなど適用除外の参考指針を示し、都道府県が地域性に応じて運用できるようにした。
初の適用となる2006年度前期分については4月1日から8月末までと期間を縮めて行われたが、本紙の調査によると都道府県ごとの減算事業所数は「ゼロ」から全居宅事業所の「約2割」までバラつきがあった。
(シルバー新報より)
<介護報酬 「加算」の取得は低調>
介護報酬のマイナス改定が続く中で、「加算」の取得は収入を維持するための大きな要素だが、全体として低調であることが、厚生労働省のまとめた「介護報酬改定後」の動向でわかった。最も取得が低いのは「優良事業所」を評価する特定事業所加算で訪問介護では0.5%、居宅介護支援事業所ではほぼゼロ%だった。
06年改定では加算が乱発されたのも大きな特徴だ。加算は事業者にとっては、収入上積みの手段だが、厚生労働省にとっては政策誘導のツールだ。加算の取得状況は政策が思惑通りに動いているかを評価するものでもある。
分析対象は4月から11月までの8カ月間。12月末現在の認定者数は440万人で対前年同月比102%で、高齢者の増加率を若干下回ったものの、要支援〜要介護1までの利用者は142%増と依然高い伸び率だ。
(シルバー新報より) |