
<財政制度等審議会が08年度予算編成で建議(診療報酬)>
財務省の財政制度等審議会(西室泰三会長)は19日、「2008年度予算の編成等に関する建議」を取りまとめ、額賀福志郎財務相に提出した。
今回の予算編成で焦点の医療分野については、診療報酬・薬価の見直し、後発医薬品の使用促進、被用者保険間の財政調整など聖域を設けずに取り組む必要性を強調。医療界への影響が大きい診療報酬改定については、1999年度以降のいわゆるデフレ期間の賃金・物価動向を医療費の費用構造に照らしても「3.6%程度のかい離がある」として、「これを是正する方向で見直す」と明記した。
また、診療所と病院間の点数格差にも触れ、診療所への手厚い配分を見直し、全体として効率化を図る考えを示した。
◆病院・診療所間の点数格差是正求める
建議では、引き続き財政健全化に向け、歳出・歳入一体改革の確実な実施を求めた。すでに医療・年金・介護などの社会保障費は、政府方針として5年間で自然増の伸びを1.1兆円削減する方向が示されており、今回の08年度予算編成においても、自然増分として2200億円の圧縮が求められている。
今回の予算編成で焦点となる、次期診療報酬改定について建議では、「医療機関等に対し医師等の人件費を始め経費の縮減・合理化努力を引き続き進めていく必要がある」として、診療報酬引き下げへの圧力をにじませた。
ただ、診療所と病院とで常勤医師の従業時間に大きな差があることや、休日・時間外診療を実施している診療所が少ないこと、さらには同じ診療行為であっても病院に比べ診療所の方が高く点数設定されていることなども指摘。「全般的に診療所に手厚い診療報酬の配分を見直し、診療科間などでメリハリを付けつつ、全体として効率化を図る必要がある」と強調し、診療報酬点数の内容に応じてメリハリを付けながら改定作業を行うよう求める考えを明記した。
一方、薬価・医療材料については、市場実勢価格に応じた引き下げに加え、医療機器の内外価格差の縮小などを通じて、薬剤費などの徹底した合理化を求めた。加えて、医療コストの適正化の観点から後発品の使用促進を求めており、政府目標に掲げた数量シェア30%以上に向けた環境整備を求めている。
そのほか、相対的に治療効果の低くなった技術や、診療報酬で賄う必要性の乏しいものについて評価の見直しを行うほか、包括払いの一層の促進などを求めている。
さらに、来年4月に創設する後期高齢者医療制度における診療報酬体系については、長期入院や頻回受診・重複投与などの高齢者医療の現状などを踏まえて、効率化を図るべきとした。
◆2200億円めぐる議論スタート
財政審建議が公表されたことで、年末の予算編成作業が本格化する。社会保障費については、自然増分2200億円の圧縮幅を何で手当てするかが焦点となる。
まず、薬価・診療報酬改定だが、薬価については過去の改定と同様に市場実勢価格に伴う薬価引き下げが行われる。例年どおりの改定であれば、医療費ベースで800億円程度の財源が確保できる見通し。加えて、今回は後発品の使用促進策として、処方せん様式の再見直しなどで200億円程度がねん出できる。
これにより2200億円のうち、約1000億円は薬剤関係で確保できるわけだ。
一方、診療報酬改定については、財政審建議で診療報酬の引き下げ圧力をにじませたものの、病院勤務医をめぐる過剰勤務の実態や、産科・小児科医療をめぐる問題なども議論されており、前回改定のように診療報酬本体にまで切り込むようなトーンは弱い。すでに、中医協診療報酬基本問題小委員会での議論も進んでおり、初再診料の格差是正などが議論の俎上(そじょう)に上がっているところ。
自民党元総務会長の丹羽雄哉氏は17日の講演で、「全体としてプラス改定する実態にないのも事実」と発言。今年7月の08年度予算概算要求基準の決定の際に浮上した被用者保険間の財政調整が不調に終わった場合には、薬価の追加的引き下げも考えざるを得ないとの認識を示している。
中医協も来週28日には次期改定に関する意見具申を厚生労働相に提出する方針。12月中旬の08年度予算案取りまとめに向け、厚労・財務、自民・公明、日本医師会など医療団体などによるネゴシエーションが活発化する
◆「建議」より診療報酬改定
医療費については、診療報酬単価等を一定としても、今後増えつづける見込み。医療費は保険料や税といった国民の負担で賄われていることを踏まえれば、医療機関等に対し医師等の人件費を始め経費の縮減・合理化努力を引き続き求めていく必要がある。
その際、これまでの診療報酬本体の改定率を保険料・税を負担する国民の賃金や物価の動向と比較してみると、近年のデフレの期間だけでみても、引き続き大きな乖離(3.6%)があり、これを是正する方向で見直していく必要がある。
診療所と病院を比較してみると、
<1>診療所と病院常勤医では、若手医師を中心に従業時間に差がある
<2>休日・時間外診療を実施する診療所は少ない
<3>同様の診療行為であっても病院に比べて診療所の方が高い点数となっている例もあるなど。
<通院精神は一定時間以上の再診を引き上げ>
通院精神療法は、初診時の通院精神療法で30分を超えた場合に500点を算定でき、それ以外の場合は病院で330点、診療所で360点となっているが、診療時間が長時間になる場合もあれば短時間で終了する場合もあるため、初診時の30分を超える通院精神療法は据え置くが、再診時などについて、一定時間以上の評価を引き上げるものの、短時間部分は引き下げる。
薬剤の処方では麻薬取締法によって、一部を除いて14日投与が上限になっている。
このため、患者は少なくとも月2回は医療機関を受診しなければならず、社会復帰を阻害しているとの指摘があった。
診療報酬改定では、一部の医薬品を30日処方に見直す。 30日投与した場合、再診時に残薬と重複処方の有無の患者への確認を義務付ける。
精神保健福祉対策本部が04年9月にまとめた「精神保健医療福祉の改革ビジョン」では、入院医療から地域生活への重点化、受け入れ条件が整えば退院可能な
患者(いわゆる社会的入院患者)の10年間での解消を打ち出していた。
現在の精神病床における入院患者は最近10年間は約32万人で一定しているが、新規入院患者は毎年2万人ずつ増加している。ただ、短期での他院が増加傾向にあるために、総入院患者数はほとんど増加していない。
長期入院患者数は減少傾向になく、患者の高齢化なども課題になりつつあるのが現状だ。
<特定健診の受託は半数が診療所>
来年度から始まる特定健診・特定保健指導について、特定健診の受託を考えている事業者の中で最も多かったのは診療所で全体の47パーセントと、病院の39パーセントを上回っていたことが分かった。
株式会社の割合は0.06パーセントにとどまった。
厚生労働省はこのほど、7〜9月に国立保健医療科学院のデータベースヘ特定健診今特定
保健指導の受託を登録した事業者の情報を基に調査した、特定健診・特定保健指導のアウトソーシング先実態調査の結果を公表した。
実施形態は、医療機関などで行う「施設型」が80.9パーセント、検診車などを使った「巡回型」が1.1パーセント、「施設・巡回ともに実施」は17.9パーセントだった。
事業者ごとの年間実施可能件数は、「500件未満」15.2パーセント、「500件〜5000件未満」58パーセント、「5000件〜1万5000件未満」15.2パーセント、「1万5000件〜5万件未満」は7.2パーセント、「5万件以上」は4.1パーセントという状況だ。
特定健診・特定保健指導の受託希望者は、受診者の利便性を考え休日や夜間の実施を検討するよう定められているが、健診実施予定日時(複数回答)で「平日の夜間(月曜日から金曜日までの平均)」は11.5パーセントだったほか、「土曜日の夜間」は1.パーセント、日曜・祝日は午前・午後・夜間を通じて1割に満たなかった。「平日の午前中(同)」に実施を予定しているのは90.4パーセント、「土曜の午前中」は73.6パーセントなどだった。
健診の単価については、「6000円未満」44.0パーセント、「6000円〜1万1000円未満」
47.5パーセント、「1万1000円〜1万6000円未満」6.3パーセント、「1万6000円以上」1.9パーセントという結果となった。
◆保健指導は病院が診療所より多く
特定保健指導の受託を予定する事業者の内訳は、病院42.4パーセント、診療所37.パーセント、株式会社3.6パーセントで、特定健診とは逆に診療所よりも病院の方が多い。
全体の95.9パーセントが動機付け支援と積極的支援の両方を行う予定としている。
保健指導の実施予定日時(複数回答)は、「平日の午前中(月曜日から金曜日までの平均)」は77.8パーセント、「平目の午後(同)」は78.6パーセント、「平日の夜間(同)」は14.7パーセントという状況だ。「土曜日の午前中」に実施するのは66. パーセント、「土曜日の
午後」は29.4パーセント、「土曜日の夜間」は5.2パーセントとされており、月曜日から土曜日までを通して午後・夜間の実施が健診よりも若干多い。
日曜・祝日に行うとした割合は、「日曜の午前中」が10.8パーセントだったほかは、1割未満だった。動機付け支援の単価は、「6000円未満」が42.パーセント、「6000円〜1万1000円未満」34.3パーセント、「1万1000円〜1万6000円未満」12.9パーセント、「1万6000円以上」7.5パーセントという結果となった。
積極的支援は「1万6000円未満」12パーセント、「1万6000円〜3万円未満」44.5パーセント、「3万円〜5万円未満」32パーセント、「5万円以上」8.5パーセントという状況で、1万6000円から5万円の価格帯に集中している。
<医療費 負担感じる人、8割に増える…健保連調査>
大手企業健保などの全国組織「健康保険組合連合会」は20日、9月に実施した「医療に関する国民意識調査」の結果を公表した。医療費の自己負担について「重いと感じる」「やや重いと感じる」人は計79.3%で、98年に比べ12.8ポイント増。負担が重いと感じるものを複数回答で聞いたところ、トップは「保険料」の62.2%。「窓口負担」と答えた人は前回より14・3ポイント増の48.2%で最も増えた。03年度にサラリーマンの医療機関での窓口負担割合が2割から3割になったことが影響しているとみられる。
医療機関への要望では「待ち時間を短くしてほしい」が70.2%で1位。医療に関する今後の希望で最多は「医療従事者の確保・育成」(71.5%)だった。
調査対象は2000人で、回収率は63.2%。
(毎日新聞より)
<診療報酬 「ゼロ改定」見通しが強まる>
平成20年度の診療報酬改定率をめぐり政府・与党内で「ゼロ改定」との見方が急速に広まっている。財務省が求めている2200億円の社会保障費抑制の代替案としてあてにしていた、政府管掌健康保険(政管健保)の国の補助金を健康保険組合に肩代わりさせる案に見通しが立たず、診療報酬を下げるぐらいしか選択肢がなくなりつつあるためだ。危機感を強める医療関係団体は巻き返しを狙っており、年末決着に向けた攻防は激しさを増しつつある。
「われわれの調査ではみな減収減益。なぜこういう分析をするのか理解に苦しむ」。14日の厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)で、日本医師会の中川俊男常任理事は黒字続きの開業医の厚遇ぶりを指摘した健康保険組合連合会(健保連)の配布資料にかみついた。医師会がこうした資料に過敏に反応する背景には、政府・与党内で医師の技術料である診療報酬本体部分は「ゼロ改定」との見方が広がりつつあることへの焦りがある。
診療報酬改定は小泉構造改革のもとで平成14、16、18年度と過去3回マイナス改定が続いた。この間、地域医療の疲弊や産科・小児科医不足が社会問題化したこともあり、与党や厚生労働省内では当初、「これ以上の引き下げは医療現場の混乱が避けられない」と引き上げ意見が強かった。
政府・与党内の風向きが変わってきたのは、診療報酬アップのために厚労省が提示した、政管健保の国庫負担2200億円を健保組合などに肩代わりさせる案が、負担増となる健保組合や大企業の猛反対で頓挫しかかっているためだ。
「伸びを抑制しなければならない社会保障費2200億円のうち、1000億円は後発薬の普及など薬の関係で何とかなりそうだが、もう一方の大きな柱のめどが全く立っていない」。17日夜に都内で開かれた薬剤師団体の会合で講演した丹羽雄哉元厚相は、まだ社会保障費抑制策の半分ほどしか見通しが立っていないことを明らかにした。
自民党内では肩代わり額を圧縮する妥協案を模索する動きも出てきているが、実現には健康保険法の改正が必要。民主党が「安易な財源の付け替えには断固反対する」との姿勢を示し、公明党も「このようなやり方は受け入れられない」(渡辺孝男厚労部会長)としており、妥協案ですら見通しは暗い。与党が高齢者医療費の負担増凍結を決めたことも影響している。凍結で今年度の補正予算案に1500億円超を新たに計上することになり、財務省は20年度予算案でこれ以上の社会保障費の伸びを認めない方針。「他に代替案がない以上、診療報酬を上げる環境ではなくなった」(自民党中堅議員)というわけだ。
福田康夫首相が14日の経済財政諮問会議で「必要なところは充実させ、効率化できるところは大胆に削る」との方針を示したこともあり、「たとえ肩代わり案が実現しても、薬価の引き下げ分は医師不足対策などの懸案事項に充てられ、今回の診療報酬本体部分はゼロ改定が精いっぱいだ」との見方も出始めている。
こうした風向きの変化に危機感を募らせる医師会などは、自民党の厚生関係議員を中心に働きかけを強化しているが、どこまで功を奏するかは不透明だ。
(産経新聞より)
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