
<在宅療養支援病院の要件が決定>
在宅医療を行う病院を診療報酬上で高く評価する「在宅療養支援病院」(仮称)について厚生労働省は12月14日、医療機関がない地域(無医地区)を調査する基準を参考に設定した要件を中央社会保険医療協議会(中医協)基本問題小委員会(会長=土田武史・早稲田大商学部教授)に提示し、大筋で了承された。
前回の会合で議論になった在宅療養支援病院の要件は、「その病院を中心とした半径4キロ以内に診療所がなく、在宅医療を病院が行わざるをえない病院」という厳しい内容に決定したが、「在宅医療は診療所で、病院は後方支援」という方針で在宅医療は進むのだろうか。
在宅医療を進めるため厚労省は、自宅で療養する患者の往診や訪問看護を24時間体制で実施する診療所(在宅療養支援診療所)を前回の診療報酬改定で新設した。
しかし、在宅療養支援診療所が地域ごとに偏在し、在宅医療を提供する環境の整備が不十分だった。
このため、厚労省は前回の同小委で「在宅療養支援病院」を提案。診療所がない地域の在宅医療は「病院」に支えてもらい、診療報酬上では「在宅療養支援診療所」と同等に高く評価する方針を示していた。
ところが、在宅療養支援病院として認められるためには「周囲5キロ以内に診療所がないこと」などが要件になっていたため、西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)が「5キロ以内に医療機関がまったくないのは北海道でも島ぐらい。半径5キロ以内という条件はなくしてほしい」と求めていた。
この日、厚労省は「半径5キロ以内」の要件を外さずに「4キロ」に緩和。西澤委員は「4キロの要件を満たす病院は全国でも数が知れているので、今後はもっと広げてほしい」と要望を出し、今回の提案については了承した。
◆ 在宅医療は進むか
土田会長が「今回はこれで了承ということで…」とまとめに入ったところで、公益委員である前田雅英委員(首都大学東京都市教養学部長)が珍しく発言した。
「在宅医療は個人的にも世話になっている。今回の案については異論がないが、在宅医療をさらに進める方向で検討していただきたい」
<社会医療法人の法人税、非課税に>
自民党・税制調査会(津島雄二会長)は12月13日、2008年度税制改正大綱をまとめた。医療関係で焦点になっていた「社会医療法人」については、同法人の「医療保健業」(附帯業務以外)に伴う所得への法人税を非課税にするなど優遇措置の導入を盛り込んだ。また、それ以外の収益業務などによる所得に対しては、法人税率を通常の30%から22%に引き下げることも決まった。
社会医療法人は、昨年の医療法人制度改革に伴ってことし4月にできた新しい医療法人類型。2008年度からスタートする都道府県ごとの新しい医療計画に基づいて、事業の実施状況に関する直近1年度の実績などを踏まえて都道府県知事が認可することになっているため、実際にはまだない。
厚労省は、へき地医療など通常よりも公益性が高い事業として都道府県が位置付ける医療サービスを同法人に担わせる一方、▽投資家から広く資金調達できる広募債(有価証券)の発行容認 ▽税制上の優遇措置の適用 ▽収益業務の実施容認――などのメリットの担保を目指してきた。
このうち税制面について、具体的には医療保健業に伴う所得に対する法人税(通常は30%)を社会医療法人に対しては非課税扱いにすることなどを07年度の税制改正でも重点要望していた。優遇税制が担保できなければ、「単なる規制強化に過ぎない」といった指摘もあった。
しかし、自民税調は昨年末、これらの問題を「長期検討課題」として結論を先送りした。そのため厚労省は今夏、08年度の税制改正で社会医療法人への優遇税制を適用するよう改めて要望。これにより今回、法人税の非課税扱いのほか、収益業務などによる所得には軽減税率(22%)を適用することになった。
税制上の扱いが決まったことで、今後は社会医療法人を認可する際の判断基準になる要件の具体化に焦点が移る。
認可要件としては、「救急医療」「災害医療」「へき地医療」「周産期医療」「小児医療(小児救急含む)」のどれかひとつを実施することなどがすでに決まっている。厚労省は、「実際にこれらの事業をどれだけやっているかなどを踏まえて認可する形になる」と話しており、事業に関する要件についてはハードルが高くなることが予想される。
厚労省は、都道府県による認可が始まるのに先立って、「年度内のできるだけ早い時期」に要件を固めたい考え。
<診療報酬改定の諮問は1月16日>
2008年度の診療報酬改定は08年1月16日、厚生労働大臣が中央社会保険医療協議会に諮問する。改定率は07年12月18日〜20日にかけて確定することから、改定率、社会保障審議会医療保険部会、同医療部会が策定した基本方針に基づいて改定案を作成するよう求める。同日中に「診療報酬改定に係る検討状況について(現時点の骨子)」を取りまとめ、ホームページで意見募集を行う予定だ。2月半ばには答申する。
<介護報酬改定、08年4月実施せず>
介護労働者の低賃金や事業の赤字経営が深刻となり、改善措置を検討してきた厚生労働省の「社会保障審議会介護給付費分科会」は12月10日、2009年4月の介護報酬改定を1年前倒しする緊急措置を見送り、08年4月には改定しない方向で合意した。
今年10月から関係団体からヒアリングを行い、介護サービス事業の実態把握を進めてきたワーキングチーム(WT)が「労働者の処遇や事業の経営状態に関する問題には、介護報酬の水準だけでなく、さまざまな要因が影響を与えている」と報告し、委員からも慎重かつ詳細な検討を求める意見が大勢を占めたため。
介護労働者や介護事業者の窮状を訴える声の高まりにより、同分科会は状況改善のために実態把握が必要と判断。これを受けて10月に設置されたWTは、9つの関係団体から計3回にわたるヒアリングを実施し、この日、現状や今後の検討課題を取りまとめた報告書を提出した。
報告では、介護労働者の賃金水準について「全産業平均と単純に比較すれば低い」とし、また介護サービス事業の経営についても「厳しさを増している」と明記。しかし、労働者の賃金には勤続年数・年齢・性別・就業形態といった条件が、また事業者の経営にはサービスの種類や事業規模などの違いがあると指摘。諸問題の解決のためには、介護報酬の水準▽事業に係る基準や規制の在り方▽介護保険サービスの在り方とその範囲▽事業市場の状況▽事業のマネジメント▽人事労務管理の在り方▽介護労働者市場や他の労働市場の状況▽サービス提供以外の事務負担―の8つの要因について十分な分析を行い、「幅広い観点からの施策を講じる必要がある」という基本的な考え方を示した。
そうした上で、今後の検討課題として、各事業に共通するものと事業ごとのものに分類した。
共通事項として挙げたのは、介護報酬の水準はもちろん、労働者の定着のために労働者の属性に応じた対策やキャリアアップの取り組みに対する評価。これに加えて、書類作成などにかかる負担が軽減される規制の見直しや給与などの地域水準を適切に反映する仕組みの検討も盛り込んだ。
訪問・通所系の事業としては、質の確保のために、サービス提供責任者などについて、人員配置基準の在り方とともに報酬上の評価を考えるほか、訪問介護の生活援助を保険サービスとしてすべて対応することの妥当性や、保険内で決められたサービス時間に保険外の費用で上乗せできる契約の是非についても言及。さらに、施設系の事業としては、入所者の重度化を考慮した人員配置基準の在り方などの検討も示している。
次の介護報酬改定は09年4月に行われることになっているが、緊急措置として08年4月に実施する選択肢もあった。しかし、会合では、WTのメンバーを務めた池田省三委員(龍谷大学教授)が「介護報酬を設定するには労働者や事業者の視点だけでなく、サービスの報酬単位や保険料に関する社会的な合意が必要」と話すなど、委員らは今後幅広い観点から詳細な検討を行うことでおおむね合意。会合後、厚労省の担当者も「08年4月に改定を行わない議論だったと理解している」と話した。
<グループホーム、離職者相次ぐ>
2005年以降に開設したグループホーム正規職員の約4分の1が、1年以内に離職していることが11月9日までに、全国認知症グループホーム協会の調査で分かった。離職者の平均在籍月数は21.7カ月と2年未満。各施設において人材確保が困難となっている実態が浮き彫りになった。
調査は同協会がグループホーム経営の実態を把握するため、会員を対象に06年1月から12月の間について実施。入職率と離職率を、開設時期による影響を考え、04年以前開設事業所と05年以降開設事業所に分けて集計した。
結果によると、04年以前開設事業所での正規職員の入職率は22.8%、離職率は19.1%となり、05年以降開設事業所では、入職率56.5%、離職率25.8%。離職者全体の平均在籍月数は21.7カ月と2年に満たなかった。
また、非正規職員については、04年以前開設事業所では、入職率37.0%、離職率27.3%、05年以降開設事業所では、入職率68.4%、離職率は36.7%。離職者の平均在籍月数は15.4カ月だった。
このほか給与についても調査。正規職員の平均月収は勤務1年目で15.7万円、6年目でも18.4万円にとどまり、他の介護職種と比較しても低い水準を示した。一方、非正規職員については、勤務1年目で13.1万円、6年目で15.0万円だった。
同協会は、これらの調査結果を提示し、09年度の介護報酬改定に向けて検討を進める厚生労働省の「介護サービス事業の実態把握のためのワーキングチーム(WT)」の11月8日の会合で意見。介護労働者の離職を防ぎ定着率を高める措置として、賃金アップを支える介護報酬の引き上げを求めるとともに、夜勤における不安解消のために緊急時対応の仕組み構築などを訴えた。
<訪問看護ST、約3割が赤字>
訪問看護ステーションの約3割が事業損益で赤字になっていることが11月13日、全国訪問看護事業協会の調べで明らかになった。とくに職員が3人未満のステーションでは約5割が赤字となるなど小規模な事業所ほど赤字の割合が高くなっていることも判明。
同協会は、このような訪問看護事業を取り巻く厳しい実態について厚生労働省が設置する「介護サービスの把握のためのワーキングチーム(WT)」(座長=慶応大学・田中滋教授)の会合で報告。業界や行政などが積極的に訪問看護事業の活性化に向けて取り組む必要性を訴えた。
調査は、同協会が今年3月の事業損益について今年7月に会員を対象に実施。それによると、回答を得たステーションの31.6%が赤字だった。
また、職員数別・利用者数別・延べ訪問回数別で調査し、ステーションの規模ごとの赤字割合も集計した。
職員数別では、3人未満のステーションで51.6%、3〜5人未満で35.6%、5〜10人未満で26.0%、10人以上で14.8%がそれぞれ赤字。さらに、利用者数別と延べ訪問回数別でも、小規模なステーションほど赤字の割合が高くなっていることが分かった。
このほか、同協会は、人材不足によって約4割のステーションが訪問看護の利用を断った経験があることや、半年間に退職者がいたステーションが約4割に上ることなどの調査結果、また全国的に事業所が偏在・不足していることなど、訪問看護事業を取り巻く厳しい実態についてWTで報告。
訪問看護事業の活性化の必要性を指摘し、それに向けて▽利用者把握の適正化▽事業経営の安定化▽訪問看護ステーションの共通するシステムの確立―について業界や行政などが取り組むことを訴えた。
<後期高齢者の診療報酬点数表、別に定めず>
2008年度から始まる75歳以上の後期高齢者医療の診療報酬点数表の方針について厚生労働省は12月7日、後期高齢者医療の診療報酬点数表を別個に定めずに一般の診療報酬点数表に後期高齢者に関する項目を盛り込むほか、老人診療報酬点数表上の「寝たきり老人訪問指導管理料」と「薬剤情報提供料の老人加算」を廃止する方針を中央社会保険医療協議会(中医協)基本問題小委員会(会長=土田武史・早稲田大商学部教授)に提示し、了承された。
来年度から始まる後期高齢者医療の診療報酬で評価される在宅医療や訪問看護などの項目について、厚労省は「75歳未満の者に対する診療報酬と重なる部分が多いこと」などを指摘。
また、別個の診療報酬点数表を定めずに簡素化する必要性もあることから、一般の診療報酬点数表を基本にした上で、後期高齢者について現在検討している診療報酬の項目を盛り込むことを提案し、了承された。
厚労省はまた、後期高齢者の診療報酬点数表を別個に定めずに1つの点数表に統一することから、次期診療報酬改定では老人診療報酬点数表も整理する方向で見直し、寝たきり老人訪問指導管理料(430点)と薬剤情報提供料の老人加算(5点)を廃止することも提案し、いずれも了承された。
現在、寝たきり老人訪問指導管理料は、自宅で寝たきりのまま療養している高齢者を医師が訪問して計画的な医学上の管理や指導を行った場合に算定できる。しかし、在宅療養支援診療所の届出件数が約1万件に達するなど、在宅医療を支える環境が整備されている。
また、処方した薬剤の効能や副作用などの情報を提供した場合、後期高齢者の医療制度では「お薬手帳」に情報を集約化し、手帳の活用により患者の薬歴などを把握する方針が既に決まっている。
このような状況も踏まえ、厚労省は寝たきり老人訪問指導管理料と薬剤情報提供料の老人加算を廃止する方針を決めた。
前回の診療報酬改定では、75歳以上を対象とする老人診療報酬点数表を整理する方向で見直したが、「寝たきり老人訪問指導管理料」と「薬剤情報提供料の老人加算」は廃止されずに残っていた。
|