
<地域医療崩壊に揺れた07年 行き過ぎた改革のダメージ色濃く>
2007年は、病院勤務医を中心とした医師の偏在・不足に、史上最大の下げ幅となった06年度診療報酬マイナス改定のダメージが加わり、各地で地域医療崩壊が叫ばれる年となった。
政府・与党も、08年度政府予算編成、診療報酬改定論議を通じて医師不足対策を最優先するなど“行き過ぎた改革”による危機回避に舵を切った格好だ。次期診療報酬改定では本体部分が0.38%のプラスとなったが、改定財源は限られ、医療再生につながるのか楽観視はできない。
今年1月の中央社会保険医療協議会総会は、06年度診療報酬改定から1年もたたずに「7対1入院基本料に対する建議」を柳澤伯夫厚生労働相(当時)に提出した。一部の大病院が新卒看護師を大量に確保するなど、「地域医療に深刻な影響を与えることが懸念」されたのが理由だ。
医師、看護師の不足も絡み、経営環境の悪化は医療機関の倒産という形でも現れた。1-6月の上半期だけで31件と、前年実績を半年で上回るペースで伸び(帝国データバンク)、政府・与党も、状況を看過できないと地域医療の確保に向けた施策を打ち出した。
政府・与党が5月に示した6項目の「緊急医師確保対策」を受け、8月には厚生労働、文部科学、総務の3省による地域医療に関する関係省庁連絡会議が、北海道、岩手など5道県6病院を対象に緊急に医師を派遣するシステムの第1弾を決定。同時に、病院勤務医の労働環境改善、女性医師が働きやすい環境整備、医師不足地域での大学医学部定員枠の拡大-といった対策を固めた。
医師不足対策は08年度の厚労省予算案の筆頭に掲げられ、大幅増となる約161億円を確保した。政府予算編成で焦点となった次期診療報酬改定は、本体部分を8年ぶりに304億円、0.38%引き上げるプラス改定となった。ただ、医療現場からは、「この水準では医療崩壊を防げない」という声が挙がっている。
11年度までに社会保障費の国庫負担を1兆1000億円削減する歳出改革路線に対して、医療界はもちろん、政府・与党内からも新たな財源確保が不可避との声が強まっている。12月には自民党・社会保障制度調査会長の鈴木俊一氏が、年2200億円を削減する方針に「来年以降はもう無理」と限界感を示した。
来年1月には「社会保障に関する国民会議」(仮称)の初会合も予定される。有識者のほか、福田康夫首相や舛添要一厚労相らも加わり、社会保障の内容や給付と負担のバランス、消費税を含む財源確保などについて議論する。
現行の「中福祉・低負担」から「中福祉・中負担」への政策転換は図られるのか-。来年に控える衆院選が判断する最初の機会になる。自民・民主両党が、国民にどのような選択肢を示すのか、医療の将来を占う意味でも注目される。
<医療ニッポン 目標大きく下回る34%減 療養病床、約6割削減困難に>
慢性期の高齢患者らが長期入院する療養病床を2012年度末までに約6割削減する目標を立てていた国の計画に対し、これまでに削減案を示した21都道府県の削減率は平均34%にとどまり、当初目標を大きく下回っていることが27日、共同通信社のまとめで分かった。
療養病床を抱える医療機関が介護施設への転換に消極的なのが要因とみられる。現状のままでは、国の目標達成は困難で、今後削減計画を見直すことになりそうだ。
厚生労働省は各都道府県に対し、今年末までに、11年度末までの療養病床削減計画を盛り込んだ「地域ケア体制整備構想」策定を求めているが、他の26府県は検討中で、多くは年明けになる見通し。
構想素案などによると、削減計画案を示した21都道府県合計の療養病床数は、07年度で約20万6000床。これが11年度末には約7万1000床減って約13万5000床となる見込みだ。
削減率は、国の目標に近いのは57%の高知、56%の香川などわずか。山形と神奈川は1けたにすぎず、地域差も目立った。
ただ、来年4月から療養病床を転換して設置が認められる新型の老人保健施設の報酬額などはまだ決まっていないため、意向を決めかねている医療機関も多いとみられる。
東京は医療機関へのアンケート結果だけを削減計画案に反映させているほか、見直しの予定もあり、21都道府県の削減数は変動する見通し。
国は全国に約35万床ある療養病床を15万床に削減する目標を設定。治療の必要性が低いのに家族の都合などで入院している「社会的入院」の解消を図るとともに、コストの低い介護施設への転換により社会保障費を抑制するのが狙いだ。
▽療養病床
療養病床 慢性の病気を抱え長期療養が必要な患者のための病床。高齢者の入院が多く、医療保険が適用される医療型が約23万床、介護保険適用の介護型が約12万床ある。厚生労働省は2011年度末までに介護型を全廃、12年度末までに医療型を15万床程度に減らす目標を立てている。コストがより低い介護老人保健(老健)施設などへの転換を進め、社会保障費の抑制につなげるのが狙い。転換支援策として、療養病床のある病棟を老健施設に活用できるようにし、改修費用などを助成する。
(共同通信より)
<公立病院、存続かけ正念場に>
総務省は12月24日、公立病院改革のガイドライン(GL)を全国の自治体などに通知した。GLは、病床利用率が3年連続で70%を下回った公立病院に対して、診療所への移行など病床数の抜本改革を促すことなどを盛り込んだ改革プランを2008年度内に策定するよう自治体に求める内容。経営不振に悩む公立病院は来年以降、存続をかけて正念場を迎えることになりそうだ。
GLでは、公立病院改革の視点として▽経営効率化 ▽再編・ネットワーク化 ▽経営形態の見直し――の3点を提示。これらの観点からの改革を「一体的に推進することが必要」と指摘し、自治体に対して数値目標を明記した改革プランを08年度内に策定するよう求めてい
病床利用率が3年連続で70%を割り込んだ病院については、病床削減や診療所への移行などを含む抜本的な見直しを促すことを明記するなど、経営難に悩む公立病院にとっては厳しい内容になった。総務省によれば、06年度に病床利用率70%を達成できなかった公立病院は全体の約35.0%に相当する310病院ある。統廃合を含めた最終的な判断は各自治体に委ねられる方針で、来年以降が正念場になる。
一方、医師不足などによる経営悪化に伴って03年度以降に発生した不良債務を長期債務に振り替える「公立病院特例債」の発行を認めるなど、財政支援措置も盛り込んだ。特例債の発行は08年度に限って認められ、償還期間は7年という。
特例債を発行できるのは、医業収入に対する不良債務比率が10%以上(07年度末時点)に達した公立病院事業で、自治体が08年度内に改革プランを策定することが条件。総務省は、特例債の発行額に600億円を見込んでいる。
総務省は、多額の債務が足かせになり抜本改革に踏み切れない病院事業の債務返済を支援することで、自治体による再編・ネットワーク化を後押しする考え。
公立病院の再編は、行き詰まる地方財政の再建という側面もある。
全国自治体病院協議会の調べでは、自治体が運営する全国の公立病院の7割以上が06年度決算時点で経常赤字に陥っている。
赤字に関しては、これまで多くの公立病院が自治体による一般会計からの繰り入れによる補てんに頼ってきたが、自治体そのものの財政難が深刻化する中で、これ以上の負担に耐えることは困難になりつつある。
また、自治体の支援に依存する経営体質には、民間病院などから「民業圧迫」との批判が根強い。「自治体の支援を受けているのに提供する医療サービスは民間と変わらない」といった指摘もある。
GLでは、「特に民間医療機関が多く存在する都市部における公立病院については、果たすべき役割に照らして現実に果たしている機能を厳しく精査した上で、必要性が乏しくなっているものについては廃止・統合を検討していくべき」と指摘している。
これらの課題を抱えてもなお、公立病院が担わなければならない医療とは何なのか? 来年以降は、民間病院では対応が難しい医療を担うなど、公立病院が自らの存在意義を示せるかどうかが存在の必然性を示せるかどうかが課題になる。
<病院救急車 全国初の共同利用、救命率アップ目指す 東京>
一つの病院が所有する救急車を複数の病院で共同利用する試みが全国で初めて東京都墨田区で始まっている。消防救急車の出動の約1割を占める転院搬送を病院救急車が担うことで、フル稼働が続く消防救急車の現場到着を早くし救命率アップを目指す。消防救急車が現場の傷病者搬送に専従できる体制作りに向けたモデルケースとして注目されている。
共用されているのは白鬚橋(しらひげばし)病院(同区東向島4、石原哲院長)の救急車で、墨田区から約5キロ圏内の21病院と6診療所が参加。平日の日中の転院で、医師が緊急搬送や医療措置をしながらの搬送が必要と判断した場合が対象になる。
医師が患者や家族に有料であることなどを説明し、同意を得て搬送日時、患者の傷病状態などを白鬚橋病院に連絡。救急救命士2人と、委託契約する民間救急事業者の運転手が救急車で要請した病院へ行き、サイレンを鳴らして患者を運ぶ。白鬚橋病院が救急救命管理料(診療報酬点数500点=5000円)を保険請求し、患者が自己負担分(3割など)を支払う。
開始した7月から11月末までの5カ月間の出動は124件。年換算すると、白鬚橋病院が昨年単独で使用した回数(178件)の1.7倍になる。同病院によると救急車の車両・装備費は約1400万円。運用には人件費などで年約1500万円必要だが、現行の診療報酬体系では酸素投与や点滴などの処置をしても請求できないため3000回出動しないと採算が取れない。
院内で医師への周知が不十分だったり、患者が費用負担を嫌がったりして従来通り消防救急車が使われた例もあり、利用数増加のため周知徹底や共用地域の拡大も課題となる。
東京消防庁の昨年の救急出動件数は68万6801件で頻度は46秒に1回。最寄りの消防署から駆けつけられないことも多く、現場到着まで6分10秒と6年前より40秒延びた。うち転院搬送は約5%の3万5464件、全国統計では1割近くを占める。石原院長は「地域の安全を確保する意味で、行政の補助なども得られれば、病院救急車の共同利用は広がるのではないか」と話している。
(毎日新聞より)
<メタボ 膨らむ市場 漢方薬や健康測定器>
生活習慣病の原因とされるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群、通称メタボ)の予防効果をうたった漢方薬や健康測定器の販売が伸びている。
来年4月から職場健診などでメタボを診断する「特定健診・特定保健指導」が始まるのも追い風だ。三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、2005年に2兆円だったメタボ関連市場の規模は2010年に3・6兆円に拡大すると予想する。ただ、メタボの診断基準は専門家の間でも意見が分かれており、落ち着いた対応が必要だ。
厚生労働省の推計では、特定健診の対象となる40〜74歳の約5700万人のうちメタボの該当者や予備群は約1900万人。メタボへの関心が高まり、販売が伸びているのが肥満症や便秘などへの効果をうたった漢方薬だ。
ロート製薬の「防風(ぼうふう)通聖散(つうしょうさん)錠」を含む「和漢箋」シリーズは、06年11月からの1年間で30億円を超えるヒットになっている。
小林製薬の漢方内服薬「ナイシトール85」も06年3月の発売から1年間で売上高が35億円を超えた。07年4〜9月は前年同期比62・5%増の勢いで、2年目は50億円を見込む。
漢方薬はキキョウやシャクヤクなどの生薬を組み合わせて製造する。厚労省が認める210通りの組み合わせ方に沿っていれば、1〜2年で製造・販売の承認が得られるため、新製品を投入しやすい。
健康機器では、データの計測だけでなく、医療サービスと組み合わせた工夫をメーカーが始めている。
日立製作所は、腰に装着したセンサーで一日の運動量と消費カロリーを正確に測り、専用の携帯端末に無線通信で送信するシステムを開発した。携帯端末をかかりつけの医師が持てば、メタボの予防に効果的な指導ができるというわけだ。
健康測定器メーカーのタニタも、体脂肪量などの測定器で測ったデータを送信してもらい、専用データベースで記録を管理し、健康面のアドバイスを提供するサービスを3月に始めた。09年度までに45万人の会員獲得を目指している。
メタボ予防機器の先駆けと言える松下電器産業の乗馬型健康機器「ジョーバ」は5世代目に進化し、00年の発売から累計の販売台数は30万台を突破している。
◆特定健診・特定保健指導
メタボリックシンドロームの早期発見を主な目的として、40〜74歳を対象に、企業の健保組合や市町村などに実施を義務付けた。腹囲が基準値(男性85センチ、女性90センチ)以上で、さらに血圧、脂質など2項目以上の異常があれば、食事などの改善を指導する。
(読売新聞より)
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