<後期高齢者診療料めぐり意見交換>
中央社会保険医療協議会(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大教授)は5月21日の総会で、後期高齢者(長寿)医療制度に合わせて今年4月の診療報酬改定で新設した「後期高齢者診療料」などの点数について、各委員から意見を聞いた。中医協の部会は、4月の診療報酬改定に伴う影響などを検証する予定で、厚生労働省も検証の結果を踏まえ、必要に応じて点数算定の仕組みを見直すなどの対応を取る方針だが、総会では「(後期高齢者医療)制度と診療報酬は区別して考える必要がある」など、現在の仕組みを直ちに見直すことには慎重な意見が相次いだ。
後期高齢者診療料は、「主病」である糖尿病などの慢性疾患を診る診療所の「担当医」が、患者の同意を得た計画に基づいて必要な指導や診療を行った場合に、毎月一律600点(1点は10円)を算定する仕組み。処置や検査などの費用が包括されるため、「必要な処置を受けられなくなりかねない」といった懸念の声も上がっている。
厚労省によると、4月14日現在、全国で8876医療機関が同診療料を算定しているが、青森県内では算定する医療機関がないなど、地域差がある。
総会で厚労省側は、同診療料を算定する医療機関で患者に提供する医療が制限されることはない点や、担当医を決めた後も別の医療機関をいつでも受診できる点などを強調。「逆に言うと、緩い仕組みになっている」と説明した。
委員による意見交換では、国会などでの同制度の取り上げ方について、「この問題を政争の具にして、逆に不安をあおっている」などと、制度への批判に“反論”する一幕もあった。
<後期高齢者医療制度に反対の意思表示を!>
5月20日に開かれた日本看護協会の2008年度通常総会。一般参加者や代議員から、後期高齢者医療制度に対する批判と、執行部に対する「反対の意思表示を!」という声が次々に上がった。
口火を切ったのは、東京の代議員。
「4月の看護協会声明を読ませていただいたが、残念ながら悲しいし、腹が立つし、情けないという思いがあった。訪問看護の評価についてはたくさん書かれていて、それはそれで納得はできるが、後期高齢者医療制度の全体像については、ほとんどと言っていいほど触れられていない。命を年齢で区切るなど許されないことであり、多くの医師会でも反対を表明している」
一般参加者からも、強硬な意見が出された。
「4月14日の声明は、世論と少しずれていると思います。国民の健康と福祉を守る職能団体として、制度の問題点をきちんととらえ、国民の声を聞き、国に対しても許せないことについてはしっかりと意見が言えるようにしてもらいたい」
こうした意見に対し古橋美智子副会長は、「現在、迷走しているのは保険制度そのもの、負担や保険料について。看護協会としては、後期高齢者と呼ばれる人たちの暮らしを重視して、その中で介護を考え、そして必要な医療を考える、というスタンスに立っている。その上での訪問看護。制度については、改めて議論が行われるということなので、その議論を待ちたい」と述べた。
さらに、それを受けた代議員の発言には大きな拍手がわき起こった。
「そもそも、国民はこの制度そのものに反対している。医師会も多くが反対。75歳以上の人たちはじめ、多くの国民は、怒っている。それなのに、看護協会は制度の是非を問うこともなく、『制度が通ったからこうしよう』と言っている。そのことは非常に残念。ぜひ、看護協会も医師会のように反対の声明を出せないものか、期待している」
<介護従事者処遇改善法案が成立へ>
介護従事者の待遇改善を図り、介護現場の人材不足を解消するため、超党派で提出した「介護従事者処遇改善法案」は5月20日、参院厚生労働委員会で全会一致で可決された。21日の参院本会議で成立する見通し。
介護人材の確保をめぐっては、民主党が今年1月、地域別、サービス内容別に平均的な賃金水準を決めた上で、その水準を上回る賃金を支給する介護事業所を「認定事業所」として介護報酬を3%加算することを柱とする法案を衆院に提出。この案では、介護労働者の賃金が月額2万円程度の引き上げとなる試算だった。
しかし、「財源の裏付けがない」などと自民党が批判。成立の見通しが立たない中、民主党が介護人材の確保に関する法整備を優先する観点から、提出した法案を取り下げた。その後、与野党協議を経て、超党派による「介護従事者処遇改善法案」が提出され、4月25日の衆院本会議で可決、参院に送られた。
同法案は「来年4月までに、介護従事者の賃金をはじめとする処遇を改善するための施策の在り方について検討し、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」としているだけで、早急な具体策が求められている。
この日の委員会では、介護サービス事業者の不正事案の再発防止などを目指す政府提出の「介護保険法改正案」も全会一致で可決された。
<社会福祉系大学で志願者離れ>
福祉現場の人材不足が深刻化し、担い手の養成や確保が重要な課題になりながら、社会福祉系大学への志願者が2005年をピークに大幅に減少していることが、5月20日までに分かった。大手予備校・河合塾(名古屋市)の集計では、社会福祉系大学への今年春の志願者は約3万4800人で、昨年に比べ2割近く減少。低賃金で劣悪な労働条件にある福祉職を学生が敬遠しているとみられ、若者が生涯の仕事として福祉職に魅力を感じる施策を国が早急に打ち出すことが求められている。
関係者約700人を集め、東京都内で18日に「福祉関係者共同フォーラム」を開いた実行委員会などによると、福祉労働者の賃金は正規職員でも月額十数万-20万円程度。全産業の約6割にとどまり、若年労働者の多くは年収200万円未満の“ワーキングプア”の状態に置かれている。介護職の場合、離職率は20.2%に上り、全産業平均の17.5%を上回っている。
こうした状況を反映し、社会福祉系の大学や専門学校で社会福祉士や介護福祉士などの資格を取得しても、「将来に展望を持てない」という理由で福祉職に就かない学生が増えている。社会福祉学科では有数の歴史を持つ都内の私立大では、学生の7-8割が社会福祉士の資格を取得していたが、約2年前からは4割程度にまで落ち込んでいるという。
社会福祉系大学への志願者減少の背景には、卒業後の進路に対する不安があるとみられる。河合塾によると、社会福祉系大学への志願者は05年をピークに次第に減少。社会福祉系の学科などを設置している全国の大学のうち、104私立大について今年の一般入試の延べ志願者数を調べたところ、3万4807人と昨年の4万2799人に比べ18.7%も減っている。
河合塾の話では、長引く不況から大企業などが求人を絞っていたころは「将来に備えるという目的で、学生の間に『資格志向』が根強く、介護福祉士や社会福祉士を取得できる社会福祉系の大学は人気が高かった」という。しかし、企業の業績が回復し、新卒への門戸を広げ始めた2-3年前から、様相が一変。社会福祉系への志願者が減り、就職時に選択の幅が比較的広い経済学部や法学部などの人気が高まってきている。
河合塾では「福祉職の厳しい現状を報道などで知り、そのような現場で働くことが想像以上に大変だと、受験生の意識が変わった面もあるのではないか」とみている。
<インドネシア人看護師らの受け入れ施設を募集>
インドネシアとの経済連携協定(EPA)に伴う、インドネシア人看護師・介護福祉士の受け入れ施設の募集が、5月19日始まった。
この日、「経済上の連携に関する日本国とインドネシア共和国との間の協定に基づく看護及び介護分野におけるインドネシア人看護師等の受入れの実施に関する指針」が公示された。これにより、社団法人国際厚生事業団が唯一のあっせん機関となり、同事業団が受け入れ施設の募集を始めた。募集期間は6月1日まで。
看護師候補者の受け入れ施設は、看護師学校養成所の臨地実習受け入れ病院と同様の体制が整備されている病院であることが前提条件。その上で、看護師の人数など7項目の要件を満たす必要がある。
介護福祉士候補者の受け入れは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで定員が30人以上の介護施設。このほか4項目の要件を満たす必要がある。
また、同事業団では東京と大阪で説明会を開催する。東京は22日、国立がんセンター内の国際研究交流会館。大阪は23日、トーコーシティホテル梅田。
<インドネシア人看護師ら500人、7〜8月の来日が正式決定>
日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)に基づき、7月下旬から8月初旬にかけ、インドネシア人看護師200人と介護士300人が来日することが19日、正式に決まった。
来夏も同様で、2年間で計1000人を受け入れる。人手不足が深刻な医療・福祉分野で、初の本格的な外国人労働者の受け入れとなる。
EPAは昨年8月に両国政府が署名、今月16日に日本の国会で承認された。これを受け、インドネシア海外労働者派遣・保護庁と、日本側受け入れ調整機関の厚生労働省の外郭団体「国際厚生事業団」(東京・新宿)が19日、ジャカルタで覚書を交わした。国内では同日、受け入れ施設の募集が始まり、インドネシアでも候補者の募集が行われる。
<年金改革 税方式「消費税上げ13%も」>
政府の社会保障国民会議は19日の所得確保・保障分科会で、読売新聞社、自民党の議員連盟「年金制度を抜本的に考える会」、日本経済新聞社などが提案した年金改革案に基づき、それぞれの案に必要となる消費税率などを計算した財政試算を発表した。
2009年度に改革を行う場合、日本経済新聞社などが提案した基礎年金を税でまかなう「全額税方式」を導入すると、現行5%の消費税率に4・5〜13%(1%を2・8兆円で換算)の上乗せが必要となることが分かった。これに対して、税と保険料でまかなう現行の「社会保険方式」を修正した読売案では2%の消費税率上乗せにとどまった。
政府が「全額税方式」の将来試算を行ったのは初めてで、試算にあたり、自民党の議員連盟や日経新聞などにより提案されている案を踏まえ〈1〉全員に基礎年金の満額(月6・6万円)を一律給付〈2〉過去の保険料未納分に応じて基礎年金を減額〈3〉全員に満額給付し、過去の保険料納付者に加算――の3類型に分けた。
それぞれの類型により、政府が決定した基礎年金の国庫負担率を3分の1から2分の1に引き上げるための2・3兆円のほかに、9〜33兆円の財源が必要という結果となった。
また、〈2〉〈3〉の場合は、制度の完全移行に65年間程度かかり、全額税方式を20年間かけて段階的に導入すると、85年かかるケースもある。
一方、読売案は、基礎年金満額の月7万円への引き上げに1・2兆円、低所得の高齢者世帯に対する5万円の最低保障年金創設に1兆円など新たに必要な財源は計5・7兆円だった。
また、「全額税方式」導入時の消費税負担の増加分と、「社会保険方式」廃止による保険料負担の減少分の差を比較した結果、勤労者世帯では消費税の負担が月平均0・7〜4・2万円増えるのに対し、保険料負担は同最大9000円減にとどまり、すべての年代で負担増になることが分かった。65歳以上の場合は、より負担が重くなる傾向がある。
過去の年金積立金を活用し、「全額税方式」導入時の税率引き上げを遅らせるとしても、最長で7年程度しかもたない。
(読売新聞より)
<保険免責1000円で医療費負担4割に>
健康保険から給付される医療のうち、一定の金額までは医療保険の適用を免除して全額を患者の自己負担とする「保険免責制」の導入を、財務相の諮問機関「財政制度等審議会」(西室泰三会長)が検討している。仮に1000円の保険免責制が導入されると、患者の自己負担が現行の3割から4.1割に跳ね上がるため、日本医師会などが「公的医療保険が崩壊する」と反対している。
日医などによると、医療制度の改革が議題となった4月25日の財政審では、保険免責制の導入について、2009年度予算編成に向けた建議(意見書)の取りまとめに向けた議論の中で検討するという意向が示された。
外来一人当たりの医療費と患者負担は、06年には一般の医療費が平均で6413円、老人(現在は後期高齢者)が7230円。患者負担は、一般が3割で1920円、老人が1割で720円だった。
免責額が1000円の場合には、医療費が1000円までは保険が適用されず、全額が自己負担に。そして、1000円を超える部分について、その超過額の3割が患者負担となる。
仮に1000円の免責制が導入されると、06年時点の6413円の一般医療費のうち、1000円が免責となり、残りの医療費5413円の3割(1620円)が患者負担となる。このため、免責額の1000円と3割負担分の1620円の計2620円が患者負担となり、医療費全体の4.1割を占めることになる。
これを老人医療費に当てはめると、06年の負担額720円は1620円となり、現行1割の2倍以上の2.2割の負担となる。
日医は「保険免責制は、保険の給付範囲を狭め、医療の格差を助長する」と指摘。「国の財政や経済界には、メリットをもたらすかもしれないが、将来は、疾病の重篤化を招き、公的医療保険の崩壊につながる恐れもある」と反対している。
また、全国保険医団体連合会なども「保険免責制が導入されれば、受診頻度が高い患者ほど負担が重くなる。保険証1枚でかかれる公的医療を縮小させて、保険がきかない医療を拡大することだ。国民皆保険制度を根底から崩すものであり、絶対に認められない」と批判している。
<看護師1人で開業実現>
潜在看護師を掘り起こし、制度にとらわれない柔軟な支援で在宅ケアに携わる看護師を増やす活動などを行っている全国訪問ボランティアナースの会キャンナス(菅原由美代表)が中心となり、7月に「日本開業看護師会」を発足させる。現在は制度上、2・5人以上いなければ開設できない訪問看護ステーションの基準緩和を求めたり、開業意志を持つナースの全国的なネットワークづくりを行っていく。
呼びかけ人代表の菅原さんは、「人員基準が緩和されればもっとたくさんの看護師が独立し、地域で困っている人を支えることができる。自己責任、自己決定ができるナースが増えることは、在宅ケアを推進する原動力になるはず」と話している。発会式は7月19日、東京都港区の女性と仕事の未来館で開催する予定だ。
訪問看護ステーションは最低基準が2・5人以上となっており、医師やケアマネジャーのように看護師が1人で独立・開業することはできないのが現状だ。キャンナスでは昨年10月、在宅ケアや開業に関心のある看護師を対象に「1人開業」の実現に向けて活動していくネットワークづくりを呼びかける集会を開催したところ、150人が集まり、「1人で開業できるなら訪問看護事業をしたい」「看護師としての路を模索している中で参考になった」など賛同する声が多かったという。新しい看護師の働き方を切り拓く活動に発展させていくため、このほど開業看護師会として正式に発足させることとした。
(シルバー新報より)
|