
<介護報酬改定で論点提示 短期入所療養介護 有床診にも>
次期介護報酬改定に向けて厚生労働省は14日の社会保障審議会・介護給付費分科会に、「短期入所療養介護」を、有床診療所の一般病床でも実施できるようにしたり、「居宅療養管理指導」で、看護職員がケアマネジャーや医師と協働して療養上の支援を行ったりする仕組みを導入する案を提示した。
短期入所療養介護は、介護老人保健施設や病院・診療所の療養病床の空きベッドを利用して行われるが、利用が伸びていない。厚労省によると、療養病床を持つ医療施設のうち、短期入所療養介護を実施しているのは病院の34.5%、診療所の37.9%にとどまっていた。厚労省研究班が2007年度に在宅要介護者について行った調査では「不足しているサービス」として、約3割が「療養病床以外の病床などで行われるショートステイ(短期入所療養介護)」を挙げていた。
そのため厚労省は、改定に当たっての基本的な考え方として、<1>短期入所療養介護事業所の拡大<2>緊急時体制の見直し<3>「泊まり」以外の機能の強化-を提示。急な医療行為にも対応可能で、患者の身近にある有床診療所の一般病床でも実施できるようにするべきとした。短期入所療養介護を提供する事業所の拡大などが目的で、現行の短期入所療養介護と同じ施設要件などを満たしていれば実施できるようにする考え。
一方、厚労省は、通院が困難な療養者に対し、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士らが訪問して療養上の管理や指導を行う居宅療養管理指導について、看護職員がケアマネジャーや医師と協働し、居宅での療養上の支援を行う仕組みの導入を提案した。
居宅療養管理指導をめぐっては、利用者の約8割が要介護2-5の中重度者である一方、自宅などで療養する「要介護2」以下の人の利用が低いことが指摘されていた。
厚労省は介護給付費分科会に、看護職員がケアマネジャーや医師と協働し、居宅での療養上の支援を行う仕組みの導入を提案。また、薬剤師による居宅療養管理指導について他職種との連携や、診療報酬との整合性の観点から見直しをすることや、居住系施設に入所する要介護(要支援)者に対する適切な評価などを挙げた。
◆日看協・井部委員ぜひ実現を
同日は井部俊子委員(日本看護協会副会長)が、次期介護報酬改定の居宅系サービスについての要望を示した。
訪問看護事業所経営を「危機的な状況」とした上で、訪問看護費やターミナルケア加算の評価引き上げなどを要望。軽度要介護・要支援者の在宅療養支援については、軽度-中等度の要介護者らの訪問看護の利用者が1割に満たず、訪問看護必要者が潜在化していると説明し、訪問看護師が軽度者らの在宅療養支援を行い、不要な救急搬送や入院を回避する新たな仕組みの導入を求めた。
井部委員は、厚労省の提案について「看護職員がケアマネジャーと協働して在宅療養支援を行う仕組みは必要。これはぜひとも実現してもらいたい」と話した。
<小規模多機能型の利用促進が必要 社会保障審議会介護給付費分科会>
社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長・大森彌東京大学名誉教授)は14日、2009年度介護報酬改定に向けて居宅系サービス、地域密着型サービスについて検討を行った。検討を行ったのは、▽特定施設入居者生活介護▽福祉用具▽ケアマネジメント(居宅介護支援、介護予防支援)▽短期入所生活介護▽短期入所療養介護▽居宅療養管理指導▽夜間対応型訪問介護▽小規模多機能型居宅介護―の8点。小規模多機能型居宅介護について、利用者がいまだ少ないことを受け、ケアマネジャーとの連携など利用促進につながる仕組みの構築などが提案された。
<介護現場 報酬上げても給与増えず 「3%では“末端”まで回らぬ」>
介護の現場では、きつい仕事のわりには報酬が低いことなどを理由に介護職を離れる人が多く、人手不足による「介護保険制度崩壊」の危険性さえ指摘されている。10月末に政府・与党がまとめた追加経済対策には、こうした介護職員の賃金増加などを目的として、介護保険制度発足の平成12年以来、一貫して低く抑制されてきた介護報酬(介護サービスの公定価格)を来年4月から総枠で3%アップすることが盛り込まれた。ところが、このアップ分が介護職員の待遇改善につながらないという懸念が高まっている。(桑原雄尚)
◆保険料値上げは抑制
介護報酬の改定は3年に1度行われる。これまでは、介護の総費用を抑えるという目標を掲げ、平成15年度は2・3%、18年度は2・4%と、いずれも引き下げられた。この結果、介護職員の給与も抑えられ、介護現場では離職が進行。介護職の人手不足は介護崩壊を引き起こしかねず、待遇改善が緊急課題となっていた。
政府・与党は今回の改定で、従来の引き下げ路線を転換し、3%アップ方針を決定。これにより、介護職員の賃金は平均月2万円増え、現在約120万人の介護職員が10万人程度増えると見込む。
だが、介護報酬を3%上げると、介護給付費も年約2300億円(サービス利用料の自己負担分を含む)増加する。これに伴い、保険料もアップすることになる。1人当たりに換算すると月120〜130円のアップだが、もともと来年度から、高齢者の増加による自然増だけで200円弱の値上げが見込まれており、両方合わせた上げ幅は月300円程度になる。
現行の65歳以上の平均保険料は月4090円で、制度発足当初の月2911円の4割増。政府・与党は「保険料がさらに急増すれば世論の反発は避けられない」と判断。追加経済対策では、激変緩和策として、20年度の第2次補正予算で1200億円の基金を創設し、原則として、21年度は介護報酬のプラス改定に伴う保険料値上げ分の全額を、22年度は半額を補填(ほてん)することも決めた。
だが、こんなに苦労して引き上げた介護報酬が介護の現場に行き渡らないとしたら…。
◆待遇改善は可能?
介護報酬の引き上げ分を介護職員の賃金に反映させるための具体策については、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の介護給付費分科会で検討が進められている。厚労省は「介護報酬のプラス改定によって、介護事業者が一律に収入増となるわけではない」として、報酬引き上げ分は事業者の規模や地域性などを考慮しメリハリを付けて配分する考えだ。
舛添要一厚労相は14日の衆院厚労委で「手厚い人員配置を行う事業者や雇用管理を改善する事業者に(介護報酬を)手厚くする。さまざまな経営モデルも提示する」と説明。厚労省は月内に具体案を示す方針だ。
介護福祉士などの有資格者を多く採用したり、夜勤体制を充実させたりした事業者に加算するほか、事業者が増収分を介護職員の賃金増に回しているかをチェックするため、事業者に給与水準の公開を求めることなどが検討されている。
ただ、介護団体の関係者からは「介護報酬を3%引き上げただけでは、中小事業者や非正規職員まで行き渡らない」との批判が続出。14日の分科会では、3%の引き上げ幅の算出根拠を問う声も上がった。
また、介護報酬改定をめぐっては、職員待遇改善だけでなく、認知症対策なども大きな課題だ。分科会は年内に、改定の基本方針を取りまとめる方針だが、課題は山積している。
(産経新聞より)
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